新型コロナワクチンによる心筋炎・心膜炎について

新型コロナワクチンの接種後に、心筋炎や心膜炎を疑う事例がごく少数ではありますが報告されています。特に、1回目よりも2回目のmRNAワクチン(現在日本で使用可能なものはモデルナ製、ファイザー製)接種後に、高齢者よりも思春期や若年成人に、女性よりも男性に、より多くの事例が報告されています。

心筋炎・心膜炎とは

心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしています。ポンプの主な働きは心室(左心室:全身へ血液を送る、右心室:肺へ血液を送る)を形成する心筋(心臓の筋肉)の収縮によってなされます(図1)。また、心筋の外側には心臓を包み込むように心膜という心臓を保護する膜があります(図1)。これら心筋や心膜に炎症が起こった状態を心筋炎、心膜炎と呼びます(図2)。通常はウイルスや細菌が原因となりますが、新型コロナワクチン接種により発症することがあります。心筋炎が重症化すると心筋がむくみ心筋の収縮力を低下させ、命にかかわる不整脈(脈の乱れ)を引きこす場合があります。心膜炎においては炎症によって心膜から産生された浸出液(しんしゅつえき)が心膜の内側に溜まり(心のう液と呼びます)、重症化すると特に右心室への血液の流入が妨げられ、心臓のポンプ機能を著しく低下させます。心筋炎と心膜炎は両者が同時に発症する場合や各々単独で発症する場合があります。
心筋炎・心膜炎は命にかかわることがあるため、疑われた場合には早期に循環器内科での診察が必要になりますが、新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎は軽症のことが多いといわれています。

図1. ふつうの心臓
図1. ふつうの心臓
図2. 心筋炎・心膜炎の心臓
図2. 心筋炎・心膜炎の心臓

日本における新型コロナワクチンによる心筋炎・心膜炎の特徴

  • 10代・20代の男性が他の年代に比べて頻度が高い
  • 10代・20代の男性ではファイザー製よりモデルナ製において頻度が高い
心筋炎・心膜炎の報告頻度
厚生労働省ホームページより

心筋炎・心膜炎にみられる症状

接種数日後に下記症状がみられることが多いです。下記症状は他の循環器・呼吸器疾患でもみられることがあります。また、当クリニックに下記症状を伴って来院される方のほとんどは検査で心筋炎・心膜炎は否定されており、ワクチン接種後に下記症状がみられた場合でも一人で悩まずに専門医の診察を受けることが重要です。

  • 胸の痛み
  • 違和感
  • 締め付けられる感じ
  • 動悸
  • かぜの症状
  • 息切れ
  • 呼吸困難

新型コロナワクチン接種後に心筋炎・心膜炎が疑われた場合の対応

循環器内科の受診

当クリニックにおける心筋炎・心膜炎が疑われた場合の検査

  • 心電図検査:心筋炎や心膜炎にみられる所見のチェックをします。
  • 胸部レントゲン検査:心筋炎や心膜炎では心臓が大きくなることがあるため、心臓の大きさを計測。また、胸の痛みは肺炎や他の肺の病気でもみられる症状であるためそれらのチェックをします。
    1~2の結果を総合的に判断し、下記検査を行います。
  • 血液検査:心筋炎・心膜炎では炎症反応(白血球、CRP)が上昇することが多く、また心筋炎では心臓の筋肉障害を反映する心筋トロポニン値やCPKなどが上昇します。
  • 心臓超音波検査:心筋炎では心臓の筋肉の浮腫(むくみ)や心臓の筋肉の動きが低下します。心膜炎では心臓周囲に炎症による浸出液が溜まります。

知っておきたいポイント

  • 新型コロナワクチンによる心筋炎・心膜炎の発症は非常にまれ。
  • 新型コロナワクチン接種による心筋炎・心膜炎は軽症のことが多い。
  • ウイルス感染に伴う心筋炎・心膜炎では発症率や重症化率は、新型コロナワクチン接種によるそれよりも高い。
  • 新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎を疑わせる症状を自覚したときは、循環器内科を受診する。